月経痛・月経前症候群・更年期障害
月経痛・月経前症候群・更年期障害
月経困難症とは、月経(生理)に伴って起こる病的な症状を言います。月経痛(月経時の下腹痛)だけでなく、頭痛、腰痛、排便痛、吐き気、下痢、疲労感など、他の部位の症状も含みます。これらの症状が月経周期と関連している場合は、治療によって改善できる可能性があります。
機能性 | 器質性 | |
---|---|---|
原因 となる 病気 |
なし |
あり
|
機序 | 月経時に子宮内膜から放出される プロスタグラジンによる、 子宮や血管の収縮等 |
上記疾患による過度の プロスタグラジン放出、 子宮内圧上昇等 |
経年 変化 |
あまり変化しない~改善 | 徐々に悪化する |
治療の 必要性 |
症状に応じて行う | 症状は軽くても疾患の進行抑制の ために必要な場合がある |
ここでは主に薬物療法についてご説明します。器質性月経困難症の場合は手術をお勧めする場合もあります。
それぞれの症状に対して治療を行うことを、対処療法と言います。
薬剤 | 作用機序 | 治療のコツ | |
---|---|---|---|
鎮痛薬 |
|
痛みの原因である プロスタグランジンの 分泌を抑制 |
「痛みがきそう」と 感じたら定時内服開始 |
鎮痙薬 | ブチルスコポラミン ズファジラン® 等 |
子宮や長官の収縮を 抑制 |
「痛みがきそう」と 感じたら定時内服開始 |
漢方薬 | 温経湯、当帰芍薬散 等 | 体質改善 | 他の治療法に比し効果は 弱いが、他剤と併用可能 |
女性ホルモンを用いた治療法です。対処療法では改善が不十分な場合に行います。効果は高いですが、副作用のリスクが多少はあるため、病状、合併症、体質等により適切な治療法の選択が必要です。
薬剤 | 作用機序 | 治療のコツ | |
---|---|---|---|
①LEP | フリウェル®、 ジェミーナ® 等 |
排卵抑制・子宮内膜菲薄化 による月経量減少 |
定時内服 合併症・体質により 使えない方も |
②黄体ホルモン 療法 |
ジエノゲスト、 デュファストン® 等 |
排卵抑制・子宮内膜菲薄化 による月経量減少 |
定時内服 出血量が多い時は 休薬を検討 |
③偽閉経 療法 |
レルミナ®、 リュープロレリン 等 |
排卵だけでなく、 女性ホルモンの分泌を抑制 |
更年期症状が出ることあり 連続使用期間は半年まで |
④IUS | ミレーナ® | 子宮内膜菲薄化 | 挿入・抜去時に 疼痛あり 5年で交換 |
レップと呼んでいます。経口避妊薬(OC:Oral Contraceptives、一般に「ピル」と呼ばれているもの)とよく似ており、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)の2種類の女性ホルモンが配合されており、ピルと同じ成分・ホルモン含有量のものから、副作用軽減のために含有量を減らしたものまで、様々な種類があります。経口避妊薬は自費ですが、LEPは健康保険の適用が可能です。
海外では黄体ホルモンのみの経口避妊薬をミニピルとも呼ぶようです(日本に避妊用のミニピルはありません)。エストロゲンが配合されていないため止血作用がやや弱く、不正出血の頻度や量はLEPや経口避妊薬に比べて増えますが、血栓のリスクは軽減されるため、タバコを多く吸う方や40歳以降の方には安全性が高いです。また、下記の偽閉経療法とは異なり、長期間使用できることも利点です。
内服、注射、点鼻薬があります。閉経と似たような状態になるため、ほてり(首~頭部の熱感)、肩こり等の更年期に似た症状が程度の差はありますが認められます。女性ホルモンを強力に抑えるため、連続使用期間が半年に制限されています。
子宮内避妊具(IUD:Intra Uterine Device)のうち、黄体ホルモンをIUDに付加したものです。子宮内膜に直接黄体ホルモンを作用させることで子宮内膜を薄く保つことができ、月経量が減少することで月経痛を和らげます。毎日薬を内服する必要がなく便利ですが、内服薬と異なり排卵を抑制しないため、病状の進行を抑える効果は弱くなります。また病状により挿入困難だったり、気づかないうちに脱落してしまったり、長期間不正出血が持続する場合もあり、使用が適しているか個別の判断が必要です。
月経前症候群(PMS:PreMenstrual Syndrome)とは、月経の3~10日くらい前から不快な症状が出現するものの月経とともにその症状が軽減するものをいいます。多い症状は腹部膨満感、便秘、だるさ、眠気、食欲亢進、イライラ等ですが、身体的なものから精神的なものまで様々です。排卵後に増加するプロゲスチンが一因といわれていますが、詳細な機序はまだ解明されてません。 また、月経前に毎回精神的な症状が悪化して日常生活に支障をきたすような場合は月経前不快気分障害(PMDD:PreMenstrual Dysphoric Disorder)といい、うつ病との鑑別が必要です。
症状があるときだけ内服するので、簡便です。
症状があるときだけ内服する方法と、定時内服して体調維持を図る方法があります。様々な漢方薬があるので症状・体質に応じて選択し、様子を伺いながら調整していきます。有効な方ですと症状が半減~3割減程効きますが、どれを試しても効かないという方もいらっしゃいます。経口避妊薬に比し副作用リスクの少ないのが利点です。
排卵を抑制することで症状が改善しますが、症状が0にはならない方も多いです。合併症・体質により使えない方がいらっしゃいます。
閉経前後の5年間、計10年間を更年期といいます。日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳ですので、多くの方は45歳~55歳頃が更年期に該当します。ただ、閉経年齢や症状には個人差があり、早い方ですと30代後半から症状がみられる場合もあります。 閉経年齢は、1年以上月経が来なかった場合に、最後の月経があった年齢を指します。閉経が早いと女性ホルモンの低い期間が長くなり、高齢になった際に骨粗鬆症になるリスクが高まるため、更年期障害がなくても50歳頃までホルモン補充を行う場合があります。
更年期に現れる多様な症状で、他に原因となる疾患がないものを更年期症状といいます。中でも日常生活に支障をきたす場合を更年期障害と呼びます。症状の程度は個人差が大きく、ほとんど気にならない方から長期間治療が必要な方まで様々ですが、数年単位で落ち着く場合がほとんどです。 更年期症状で典型的なものは、ほてり(首~頭部に現れる急な熱感で、ホットフラッシュともいい、急に暑く感じますが体温上昇はなく、数分~数時間で消えることが多い)ですが、その他にも発汗、肩こり、指関節の違和感、動悸、睡眠障害(入眠困難、眠りが浅い)、めまい、疲労感、イライラ、気持ちの落ち込み等、多様な症状があります。ただし、これらの症状の中に治療の必要な病気が隠れている事があるため、症状が強かったり持続する場合にはそれぞれの症状の該当科を受診いただく事をお勧めしています(動悸なら循環器内科、めまいは耳鼻咽喉科、等)。
連日、もしくは症状があるときに内服します。
症状があるときだけ内服する方法と、それ以外の時にも内服して体調維持を図る方法があります。様々な漢方薬があるので症状・体質に応じて選択し、様子を伺いながら調整していきます。症状が全く無くなることはないものの、有効な方ですと症状が半減~3割減程効きます。どれを試しても効かないという方もいらっしゃいますが、ホルモン補充療法に比し副作用のリスクが少ないのが利点です。
女性ホルモン(特にエストロゲン)の減少が大きな要因と言われており、女性ホルモンの補充が特にほてりに対して有効です。他の症状に対してはホルモン補充療法で改善する場合としない場合があり、改善しない場合には他に病気が隠れていないか注意しつつ治療を行います。また、合併症等によりホルモン補充療法が適さない方もいらっしゃいます。
最終更新日:2024年11月1日